風大丸亭日乗

元大学教員、双極性障害、本と音楽と映画、そして毎日は続く

後ろ傷

どうも風邪がぶりかえしたようで家で療養。
東直己「後ろ傷」。「ハーフボイルド」シリーズ第2弾。北大受験に失敗して自棄を起こした主人公松井省吾は、北海道で最も「偏差値の低い」私立大学、道央学院国際グローバル大学(通称・グロ大)に入学している。このグロ大を皮切りに、お得意の道警批判、さらには鈴木宗男までが俎上に挙げられ、ほとんどストーリーそっちのけの森巣博状態。事件らしい事件も起こらず、このままどうなってしまうのかと思ったが、結末で「俺」シリーズの便利屋の口から、まるであらすじのように事件の背後が一気に語られるという野心作。世界の深さに主人公が全く関与できないという意味では、ハードボイルドというよりは正統派ビルドゥングスロマンというべきか。個人的にはこの結末で十分納得したので、また「俺」シリーズの視点で語り直すってのは勘弁。それにしても、東直己はやっぱりすごいよ。
後ろ傷