風大丸亭日乗

元大学教員、双極性障害、本と音楽と映画、そして毎日は続く

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

書評:寺内孝『チャールズ・ディケンズ『ハード・タイムズ』研究』

寺内 孝 『チャールズ・ディケンズ 『ハード・タイムズ』研究』 (アポロン社、1996年) 梶山 秀雄 評者も末席を汚しているが、あらためて考えてみると、「ディケンズ・フェロウシップ」というのは奇妙な団体名である。ディケンズ学会でもなければ、ディ…

書評:田多良俊樹 「植民地の逆襲と、あえてその名を告げぬ民族主義」

田多良俊樹 「植民地の逆襲と、あえてその名を告げぬ民族主義」 『幻想と怪奇の英文学』共著(春風社、2014年) 梶山 秀雄 18世紀末、ホレス・ウォポールの『オトラント城奇譚』によって始まった古典的なゴシック小説の流行は、イギリスでは19世紀の…

三村 尚央 「『充たされざる者』をシティズンシップ小説として読み解く」 『カズオ・イシグロの視線 記憶・想像・郷愁』共著(作品者,2018年)書評

この評論集の目次を一瞥して、評者は驚きと戸惑いを禁じ得なかった。なぜなら、著者が論じているのが『充たされざる者』だったからである。もちろん、評者はイシグロの研究者ではないが、小説家としてのカズオ・イシグロの一ファンであり、少なくとも全作品…