風大丸亭日乗

元大学教員、双極性障害、本と音楽と映画、そして毎日は続く

ポトスライムの舟

朝から病院。帰りに今井書店に寄ってCDをレンタル(『空中キャンプ』があった!)。TSUTAYAは旧作DVDを「いつでも100円」にしたらしいが、これは他の店にとって大きな打撃だろう。『スパイダーマン』のレンタルもよそでは出来ないようにしたみたいだし(どういう理屈かは分からない)、いよいよ囲い込み作戦で天下統一への道を歩むのだろうか。いまのところDVDを観ている時間はないので関係はないのだが。

ポトスライムの舟

ポトスライムの舟


表題作は第140回芥川賞受賞作。「働いている人なら必ず共感できる」、「自分でも驚くほど心を揺さぶられた」、「明日から仕事がんばろう、と思えた」といった帯の惹句に乗せられて購入。純分文学を読むのは本当にひさしぶり(西村賢太は除く)。いわゆる「ロスト・ジェネレーション」の現状を描いた作品、ということになるのだろうか。正社員の口がなかったり、あっても仕事が過酷で給料が安かったり、仕方がないからバイトで食いつないだり、といった状況が、淡々とした文体で語られる。こういう小説はこれからもっと増えてくるんだろうな。表題作よりも、その前日譚となる「十二月の窓辺」の方が、上司のパワハラにひたすら耐える主人公に感情移入して面白かった(僕も同じような目には何でも遭っている)。

 入社してすみませんでした。そもそも入社試験受けてすみませんでした。よく研究もせずにこの業界を希望してすみませんでした。覚悟が足りませんでした。

「仕事」って、なんだろう、とあらためて考えさせられたが、帯にあった効用があったかどうかは不明。文章が洗練されて美しいのは特筆すべき点だが、特にこれといった事件は起こらないので(ミステリじゃないから、当たり前だ)、しばらく純文学は読まなくてもいいか。
夜はひさしぶりにCoCo壱番屋でカレー。その後「出張に着ていく服がない!」と妻に付き合って、万代書店で古着のお買い物。結局、コートとブーツを買っていた。