風大丸亭日乗

元大学教員、双極性障害、本と音楽と映画、そして毎日は続く

江分利満家の崩壊

昨日の個人評価報告書がリジェクトされた一件から立ち直れずに早寝。んで、必然的に早起き。来年度のために未練がましく修正をしていたら、またしても音楽がうるさい。安眠妨害だと妻に叱られた。

A Piece of Future

A Piece of Future


別府のTSUTAYAにあったので驚喜して借りたが、石野卓球やUAや小山田圭吾、BOSEが参加した予想に違わず充実した(リミックス?)アルバム。あまりにこればかり聴いているので、妻が「死んだ人の音楽は嫌だ」と面白い暴論を吐いた。そんなこと言ったら、大抵の文学や音楽は成立しないだろう。まあ、彼女は僕がまた追悼ばかりして、「死」に接近するのを心配してくれているのだろうけど。でも、誰かが言っていたが「生きてる人より死んだ人の方が魅力的」な側面は確かにある。
江分利満家の崩壊

江分利満家の崩壊


山口瞳の息子、山口正介による「江分利満家」終焉の記録。山口瞳がいわゆる「一穴主義」(嫌な言葉だ)で、精神的に不安定な妻を気遣っていたことはよく知られているが、その妻の神経衰弱の原因の真実がミステリ仕掛けで明かされる。こういうのを読んでいると、それこそ『死の刺』ではないが、家族というのは常に修羅場と隣り合わせだと実感させられる。特に死に近づいていく母によって告白される、夫山口瞳の「あの一言」は諧謔趣味のつもりだったのかも知れないが、絶対に言うべきじゃなかった(なんと言ったかは読んでからのお楽しみ)。同時に、この本は両親をいかにして送るかが主題になっていて、不安神経症の母を抱えて一人息子としてあちこち入退院を繰り返す様子に、将来の自分の姿が見えてきて仕方がなかった。なるべく後であって欲しいが、いつかは僕も母を送ることになるだろうから。それでまでに、この作者のように、いろんなことを聞いておかなくてはならない。それこそ「お父さんはやっぱり昭彦がいいな。お母さんはやっぱり雅子がいいな」と言えるように。というわけで、俄然『血族』と『人殺し』が気になってきたわけだが、新潮文庫を探そうとアマゾンのマーケットプレイスを見ていたら、『山口瞳大全』のバラ本が出ていた。そうか、こうなったら(?)全集を揃えるという手もあるな、と「日本の古本屋」を検索すると、11巻揃いで3万8千円。思ったよりも安かったが(もしかしら公費で買えるかも)、置くスペースをどうしようと激しく自分の中で戦っているところ。