風大丸亭日乗

元大学教員、双極性障害、本と音楽と映画、そして毎日は続く

『狭小邸宅』

6時版起床。朝、娘に宿題をやらせていたら、まだ(アナログ)時計の読み方が分かっていないことが判明。おまけに学校ではもう違うことを教えているという。これはなんとかしなくては。なんでもアプリ任せにするのはよくないが、そんなアプリはないものか(後で調べたらありました)。午後からラーニングアドバイザー。いつも質問に来る学生に、結婚してると言ったらひどく驚かれた。曰く「先生って、もっとアウトローな人だと思ってました」(傍にで聞いていた補佐員の人も笑っていた)。授業ではちゃんとしているつもりなのだが、分かる人には裡に秘めた狂気が分かるということか。

狭小邸宅

狭小邸宅


第36回すばる文学賞受賞作。すばる文学賞には偶にいいものがあるが、これは「当たり」。戸建不動産会社に就職した主人公の苦闘の物語。なんといっても、前半部の「売れる」(業界では「殺す」と言うらしいが)までの過酷な職場環境の描写が凄まじい。ひたすら顧客に電話をかけるために、電話の受話器をガムテープでぐるぐる巻きに固定するエピソードには唖然。企業小説ならば、ようやく売れるようになってからは、バリバリの営業マンになるところが、そうはならないほろ苦いラストもよい。一人称と三人称が混乱していることもあるが(意図的なものかも知れない)、ぐいぐいと引き込まれる佳品。僕ならばこんな職場は1日、いや1時間と保たないだろう。そういえば、よくモデルルームの展示のイラストが入っていて、お菓子やら風船をプレゼントするというので、子供たちは行きたがったりするが、その後に電話や自宅訪問の攻勢を受けることが分かっているので絶対に行かない(どうせ買えないし)。思い出しついでに書いておくと、大学時代の友人がやはり不動産会社に就職したが、そこでは会話のテクニックを磨くために、仕事が終わってからもテレクラに電話することが義務化されていたという。その友人もやはりノルマ達成のために苦しんでいたらしく、果ては自分で家を建てるところまで(若干23歳で!)思い詰めていたが、あいつはあれからどうしたのだろうか。